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# The Witness
2008/10/05 23:27
コードネームライトの続き。
らいこふが盗賊です。
ひがしにも未公開。
ちょっと回想に近い役割です。

やっぱり女の子は必要なんだと思います。

その日僕はとある展覧会に忍び込んだ。
目的は主催者の所持する美術品だ。
ちょっとした装飾品だが、なんでも世界的な価値があるとかで欲しがる奴がいるらしい。
大方作者が死にでもしたのだろう。
そんなことには興味はないが、こうして仕事が出来るのは嬉しいことだ。もっと沢山世界的名作が作られればいい。

探偵の駒になってからしばらくたつが、僕はその前とほぼ同じ生活をしている。
むしろ前よりも仕事を増やしているくらいだ。
探偵は僕の活動を制限しない。
口では控えめにと言っているが、実際に罠などを仕掛けたりしないところを見ると制限する気はないのだろう。

そして、僕は人気のない廊下の天井に潜んでいた。
女を待つためだ。
女と言うより子供に見えたが、おそらく僕と同年代だろう。
展覧会の主催者が大切な獲物をこの女に託したのを見たのだ。
親族か何かなのかは知らないが、主催者も女もよほどの馬鹿らしい。
そんなことでは僕を欺けないし、危険が増えるだけとは思わなかったのだろうか。
しかも女はそれを着けたまま主催者を振り切り護衛もつけずに単独行動に出た。
まったくなめられたものだ。
僕を相手にすることがどういうことか分かっていない。

しばらくして、女は向こう側の休憩室の方から歩いてきた。
見間違えようのない眩しい金髪と奇妙な髪型だ。
首には僕の獲物がかけられていて、女のかわいらしい服とは何とも不釣り合いな感じがした。僕は女が天井の下を通り過ぎた瞬間、音もなく下りて後ろからそれを奪うつもりだった。
僕が今だと飛び降りたちょうどその一瞬前、

彼女は立ち止まった。

おそらく何かの気配に感づいたのだろう。
しまった。
しかし重力はすでに僕を床へ引き寄せ始めていた。
そして結果的に、僕は女と向き合う形になってしまった。

「…誰?」
いるのかいないのか分からないものにあてたもので有るべきだったその問いは、急に上から表れた僕に向けられた。
しかし僕を見るその視線にはたいした敵意は含まれていなかった。そこにつけこんで、僕はあえてマスクをとって微笑んだ。

何故こんな綱渡りをするのか、それは僕のポリシーのためだった。「怪しい人影を見た」なんていう証言のある仕事は美しくない。
まあこの女ならという油断に近い自信もあったのは確かだ。

女は思った通りの反応を見せて、ゆっくりと言葉を紡いだ。
「…あなたが、コードネームライト…なの?」
「そうだとしたら?」
女は真剣な眼差しのまま答えた。
「…夢みたい」
僕はその言葉に思わず吹き出しそうになるのをこらえて、何事もなかったように言った。
「そう、これは夢だ。だから僕のことは皆には秘密にしてくれないか」
「…うん、わかった」
「いい子だ」
女が頷くのをみると、僕は抱きすくめる動作で首の後ろの留め金を外して、
そして彼女がぼんやりしているうちに消え去った。

手に入れた獲物と、ちょっとしたミスを持って。

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